控えめオスラと花のうさぎ~蒼天編4
ウイキョウの日記
――グリダニアへ戻った私は、予期せず頭の痛い出来事に見舞われることになった。
我らが双蛇党最高司令官のカヌ・エ・センナ様が御自ら雲海へ赴くことになったのだ。
まず、私達は黒衣の森のモーグリ族との交渉許可を得るため、不語仙の座卓を訪ねた。偶然にもその場に森のモーグリ族:クポロ・コップ殿も居合わせたため、話はとんとん拍子に進み、雲海のモーグリ族との対話の仲立ちをして頂けることになった。
すると、事情を聞いたカヌ・エ様は自ら現地へ赴きたいと仰ったのだ。曰く、今まで痛みを伴う道をあまりにも避けてきた、故に今回は自ら現地へ赴きたいのだと。
……我々は今、イシュガルドの体制側には秘したまま、ドラゴン族との対話を敢行しようとしている。それに他国の指導者が関わったことが明るみになれば、どうなるか。私は側近のお歴々と一緒になって、説得しようとしたが「ここに居る皆は、そのようなことを他言したりしないでしょう?」と一蹴されてしまった。彼女の純真さと求心力の賜物といえばその通りなのだが……。と言うか、ラヤ・オ様といい、幻術皇の女性陣は時折グリダニア人とは思えない程のアグレッシブさを発揮される。ア・ルン様もさぞかし胃の痛い日々を過ごされていることだろう……。
ともかく、彼女の熱意に押される形でカヌ・エ様御一行とクポロ・コップ殿がアルフィノ殿の案内で急遽雲海へ遠征することになった。私は、『天空の地』の伝説を求めていたサンソン大牙士らのことを思い出し、テイルフェザーへ彼を迎えに行くことにする。グリダニアに戻っている筈のギドゥロ殿は生憎捕まらなかったため、現地への道順を示した地図と言付の手紙を同封した封書をジェアンテル殿へ託し出立した。
こうして何日か日を要したものの、私達は無事雲海で合流することが出来た。……サンソン大牙士は最高司令官を前に緊張しきりだったが耐えてもらうしかない。
合流したミルラとイゼルは、心なしか以前よりも打ち解けているようにも見えた。私が不在の間に親交を深めていたのだろうか。
カヌ・エ様がモーグリ族の気配を感知して声を掛けると、姿を隠していたモーグリ族が次々と姿を現した。どうやら彼らはエスティニアン殿から竜の血の臭いを感じ、ドラゴン族との争いの火種を持ち込むのではと疑っていたようだ。
そのことも踏まえ、雲海のモーグリ族の長『モグリン』殿は我々が信用に足るか見定める試練を課してきた。
……しかし実際は試練と銘打った雑用であったため、私は課せられた用事を早めに済ませ、その分の余裕をサンソン大牙士の戦歌調査活動の手助けに充てることにする。
話を聴けば、若き吟遊モーグリ・モグチャ殿も『終焉の戦歌』を探しているらしく、それを知る長のモグリン殿は共に手がかりを探すよう誘導してきた。私達は集落から飛び出していたモグチャ殿を探しだし、首尾よく『終焉の戦歌』捜索の仲間として引き入れる。
しかし、モグチャ殿を連れ帰った我々を一瞥したモグリン殿は「大切な欠片が1つ足りない、頼りない」と首を傾げる。――モーグリ族はのんびりとした気質とは裏腹に、人の感情の機微を敏感に感じ取る。きっと彼らなりにサンソン大牙士の心の空白感を感知できるのだろう。実際彼自身もギドゥロ殿がこの場に居ないことの懸念をとつとつと口にしていた。
正反対の気質ゆえ最初は不信感を募らせていたが、共に旅をするうちに分かり合い、大切な仲間であると認識しつつある。そして恐らくこの場にいないギドゥロ殿もその認識は同じはずだ。
私は「新たな手掛かりが見つかったことですし、もう一度連絡してみては」とアドバイスするが、彼は憮然と口を閉ざすばかり。仕方なく私は別用と騙ってその場を離れ、ギドゥロ殿のリンクパールを鳴らして今の状況を伝えたが、こちらも返事は芳しくない。どうやら、先日強い言葉の応酬をしたことが未だ尾をひいているようだ。どうにか合流して腰を据えて話が出来れば、かなり状況は改善しそうな気もするが……お互いの態度を見るにまだ時間が必要に思える。
そうこうしているうちにミルラ達が各々の頼まれごとを解決して戻ってきたため、サンソン大牙士はしばらくモグチャ殿とともに情報収集に勤めると言い、話は一旦保留となった。
モグリン殿は無事私達を信用に値すると認め、これでフレースヴェルグとの交流の目途もたった。
しかし日が暮れ始めていたので、その場に居合わせた者はモーグリたちの集落『モグモグホーム』へ一晩泊まっていくことになった。持ち寄った保存食やモーグリたちの貯えを並べて簡素な食事を済ませた後、カヌ・エ様が友好の証にと持ち込んだ茶と菓子で焚火を囲んだ茶会が開かれる。途中、モグチャ殿の熱烈な希望により、私は『善王モグルモグ』の歌を披露し、周囲のモーグリも歌い、踊り出す。最初は蛮神の歌として触れたこの曲もまた、もとを正せば、彼らの純然な伝承であり文化なのだ。――そう実感しながら。様々な種族と身分の者が集う穏やかな夜はあっという間に過ぎて行った。
翌日、私達はグリダニアへ戻るカヌ・エ様一行と、モグモグホームに残るサンソン大牙士と別れ、西にそびえ立つ『白亜の宮殿』へと歩を進めた。
積み荷を乗せた黒チョコボを隊列の真ん中へ据え、邪竜の眷属の襲撃を退けながら、足場の悪い浮島をひたすら歩いてゆく。
――ほぼ一日歩き詰めで、ようやく宮殿手前の『アサ―天空廊』へたどり着くが、どうやら同行したモグタン殿曰く「風の調子を見るにラッパが聞こえない場所へ行っている」とのことであったので、風の流れが変わるまで野営をすることになった。
恐らくはまたここで一晩過ごすことになるのだろう。だが、長丁場だったこの旅にもようやく終着点が見えてきた。
西部高地での経験が生きたのか、野営に苦手意識を感じていたアルフィノ殿も、いつの間にか率先して薪を拾いに行った。しかし、聖竜との面会を前に気もそぞろといった様子だったのでミルラにも手伝わせ、私はイゼルとともにシチューの下ごしらえをする。干し肉を水で戻し、サイプロプスオニオン、芋類を刻む。彼女もまた苦しい生活をしてきた分調理も手慣れたようで、少ない調理道具でいかに美味しく早く仕上げるかなど、尋ねれば丁寧に教えてくれた。
――灰汁も大方取り終え、具が煮えるのを待つ。
「賑やかな宴席だったな。モーグリ族は、本当に天真爛漫で友好的だ」
「ええ、ややマイペースなきらいはありますが、祝祭や芸術を愛する温和な種族ですよ」
「皆で茶菓子を愉しんで、貴方が求められてモーグリ族の伝承歌を唄い、それで、機嫌を良くしたミルラが、ミラージュプリズムを……フフッ」
すまない、と謝罪しつつも、笑いを堪えきれないイゼルから目を逸らし、頭を掻いた私の不寛容さを、どうか許して欲しい。
昨日の夜会は茶会と銘打っていたものの、そこは何かと大雑把な性格のモーグリ族。
提供されたジュースの一つが発酵して酒と化していたらしく、甘い匂いのするそれをミルラが興味の赴くまま口にしてしまったらしい。
結果は、言わずもがな。すっかり『ご機嫌』になった彼は、いつの間にかモーグリ族から譲渡されたらしい華やかな改造機工銃から光を打ち上げ、周囲の人間及びモーグリを皆、好みの服装に変えてしまったのだ。
『ディアンドル』という名称だったか。概ね貴族の淑女が好む、やや胸元の開いたワンピーススカートの一斉投影に、もれなく私やサンソン大牙士も巻き込まれたのであった。……最高司令官の、目の前で。……ちなみにエスティニアン殿はタイミングよく離席して、難を逃れたようだ。その危機察知能力が今は少しだけうらめしい。
「ミルラなりの善意による行動なのが厄介な所でして……。本当、何と教えたものか」
「私は楽しかったぞ。――あんな高価な服を着る機会なぞなかったからな。ミルラにはお洒落なお店に行こうと誘われたが私の立場では……」
柔らかくほほ笑むも、寂しそうに目を伏せるイゼルに、私は一瞬返す言葉を失う。霊災によって全てを喪い、己が信念の為に日の当たる場所から遠い所に身を置いている彼女にとって、あの光景すら尊いものに感じたのだろう。
数刻の沈黙を挟み、私は口火を切る。
「――良いのではないですか?イシュガルド国外では、名はともかく顔は知れていないでしょう」
「意外だな。英雄であるあなたがそんなことを言って良いのか?」
「私個人は、別段貴方を断罪するような立場にはありませんので」
そう嘯き、私はシチューをかき混ぜながら、エオルゼアの名店を思い浮かべる。
「――リムサ・ロミンサには上等な菓子を提供する料理店が、ウルダハには美意識が高く面倒見の良い服屋があります。身分や経歴で客を選ぶような店ではありませんし、持ち合わせに応じた素晴らしい品を提供してくれることでしょう。海賊、商人、移民、冒険者――。様々な生まれのものがそれぞれの場所で生きているのがエオルゼアです。……ここに居れずともいかようにも出来る。あなたが勤めを果たしたと思えたのなら、自分の心に従い、行動してみては?」
ひととおり混ぜ終えて、食材が馴染んできたので、調理器具を一旦イゼルへと預ける。
イゼルは「あなたたちは、似た者親子だな」とほほ笑み、木じゃくしと小皿を受け取った。
「正義感で生きているようで、その実、何処までも優しい心根を持っている。……あなた方には及ばずとも、私も同じ『超える力』を有する者として必ず本懐を遂げなければ」
そう言って空を見上げるイゼルに頷き返し、私は小枝を焚火にくべて火を調整した。
――やがてアルフィノ殿ら3人が戻ってきた。丁度切れかけていた薪を補充し、また鍋をかき混ぜ、シチューが食べごろになるころは西の空が真っ赤に染まっていた。
ぱちぱちと始める焚火を見つめながら、アルフィノ殿はぽつりぽつりと語り始める。この旅で改めて自分が無知であったこと、そして常に学び、他者に流されず己の信念をもって歩むことの難しさを痛感したと。
それを聴いていたエスティニアン殿は「その歳でそこまで思えるのなら十分だ」と穏やかに言い聞かせる。嘗て肉親をドラゴン族に殺された彼ですら、壮麗な遺跡群から見える過去の融和の時代に思うところがあったようだ。しかし、今の状況と未来のことを考え、邪竜を討つ必要があるのなら迷わずその選択肢を取るとも宣言した。瞬間、イゼルの顔が険しくなるが、「対話の結果次第だ」と付け足した彼に、表情を和らげる。
……こうして目的地を目前とした最後の夜は、静かに更けていった。
翌朝。フレースヴェルグが近隣に舞い戻ったことを確認し、モグタンの案内で白亜の宮殿の長い階段を上る。遠目から見た時はその壮大さに圧倒されたが、近づいてみると所々痛んでいる。モーグリ族が修復しているというが、やはり1000年の時の流れには抗えないということだろうか。
私が指定の位置に立ち、モーグリ族から借り受けたラッパを構え、音色を天高く響かせれば、巨大な竜が白毛を靡かせ、咆哮しながら降り立った。
――聖竜フレースヴェルグ。幻龍ミドガルズオルムの子にして、七大天竜の一翼である。
フレースヴェルグはこちらの頭の中に響くような声色で意志を伝達し始める。そして、その内容はお世辞にも友好的とは言えず、この場から立ち去るよう求めてきた。
そこで、イゼルが前に進み出、自分が『超える力』で過去の真相を垣間見、貴方が愛した『シヴァ』の魂を呼び下したことを伝える。ところが、それを耳にした聖竜は一段と大きく咆哮し、ミルラがおびえた様子で私の足元へ駆け寄る。……彼女の言動が、意図せずかの竜の逆鱗に触れたようだ。
困惑する我々に、聖竜は怒気を滲ませたまま語る。イゼルが呼び降ろしたものは己の心の中に抱いた幻想にすぎず、断じてシヴァ本人ではないのだと。
その言葉にイゼルは茫然と膝をつく。そのような彼女を横目にかの竜はその目で見たというこの国の過去の真実を明かした。
200年の融和の時代の後、人間は七大天竜の力の源である『竜の眼』を欲し、詩竜ラタトスクを謀殺。トールダンと配下の騎士らは双眸を抉って自ら喰らい、人知を超えた力を手に入れる。これに怒り狂ったニーズヘッグと全面的な争いになるが、最終的にニーズヘッグが片目を奪われて退却したのだという。
――こうして終わりなき戦いは始まった。永い命を有するドラゴン族にとって、憎しみはけして色あせることなく燃え続けるもの。ニーズヘッグはイシュガルドの民を未来永劫苦しませるため、生かさず殺さずの戦いを敢えて続け、人同士の分断、異端者の誕生を助長させた。
双眸を食らったトールダンらの子孫であるイシュガルド国民は子孫へ竜の因子が引き継がれる。その性質を利用したものでもあったのだ。……今まで、戦ってきたドラゴン族の中にも恐らく『元人間』が何体か含まれていたのだろう。
もはやここまでくると、今更眼を返したところでニーズヘッグの怒りは静まりはしない、とフレースヴェルグは瞑目する。そして自らも人間へ深く絶望しており、害することはしない代わりに金輪際人の世と関わることを止め、静かに滅びを待っているのだと語った。
とてつもない内容に圧倒され立ち尽くす我々をに対し、「もはや語る言葉はない」と言い残しフレースヴェルグは美しい六枚羽をはためかせ飛び立つ。
去り際、遥か頭上にある彼の眼が片方しか無いようにも見えたが、それもかつての争いで失ってしまったのだろうか。結局そのあたりの事情は聴けずに終わってしまった。
舞い上がった土埃が収まり、雲海の風音が空しく鳴り響く。
――対話が失敗に終わったことで、エスティニアン殿はすぐさま邪竜ニーズヘッグを討伐するため、東の『竜の巣』へ向かう提案をした。
過去の凄惨な出来事を知ったからこそ、すぐさま竜詩戦争を終わらせるつもりのようだ。竜の眼の力で邪竜の動きを封じ、私やミルラと力を合わせれば勝算があると踏んでいるらしい。
現実に打ちのめされ、言葉を失うイゼルには最早、彼を糾弾する気力すら残っていない。アルフィノ殿が気にかけ、ミルラが心配して話しかけるが「一人にしてほしい」とだけ言い残し、ひとりその場を去ってしまった。
私達は重い空気のまま、次の目的地となった東の竜の巣へ向かうが、浮島は厚い風壁で覆われており、生身では近づくこともできない。そこで、アルフィノ殿の提案でシドへ相談することとなった。以前蛮神ガルーダの風壁を破った実績のある彼ならきっと有効な策を提示して下さることだろう。
万一の為とニーズヘッグの見張りを申し出たエスティニアン殿を残し、ミルラとアルフィノ殿はスカイスチール機工房へ。一方私は残務処理のために一度モグモグホームへ戻ることを伝え、一度彼らと別れた。
私が転移魔法でモグモグホームのエーテライトプラザへ戻ると、いっそう思い詰めた様子のサンソン大牙士が出迎えた。
どうやら、状況はここを出た時と殆ど変わっておらず、ギドゥロ殿とも話が出来ていないらしい。
見かねたモグチャが、物陰に隠れて様子を伺っているギドゥロ殿(いつの間にかこちらへ来ていたらしい)へ接触し、サンソン大牙士の業務メモをこっそり渡して彼の熱意を伝えていたようだが、それでもなお彼は「今更顔を出せない」などと言って動こうとしなかったようだ。
思わず頭を抱えたくなったが、落ち込んでいる彼らを頭ごなしに責めても仕方がない。私は軍の旅費もタダではないのだから、とサンソン大牙士を焚きつけ、彼と私、モグチャ殿の3人で『終焉の戦歌』が眠るアバラシア雲海へと出向くことにした。
有事の為、足の確保が課題ではあったが、アインハルト家に連絡をとったところ奇跡的に旧式の飛空艇1機を融通して頂けることになった。
私は礼を述べつつ、わざと大き目の声で通話をし、約束の日時を書いたメモをこれ見よがしに近くの岩へ挟み込んで出発する。
首尾よく、積み荷の方に人の気配を感じつつ、緑豊かな雲海へ向かう。そしてモグチャ殿の証言に従って石の封印を解き放つと、金切り声のようなものに、ガンと角が揺さぶられる。
――現れたのは破壊的な旋律を放つセイレーン系の魔物であった。経緯は不明だが、その歌は集落ひとつをつぶす程の威力を秘めているようで、それが長い年月で逸話と化したのだろう。
夢見た伝説の歌が偽物であることにサンソン大牙士はショックを受け一度は生きることを諦めかけるも、そこへ積み荷に潜んでいたギドゥロ殿が現れサンソン殿へ発破をかけた。そして不敵な笑みを浮かべ、言い放った。自分たちが『終焉の戦歌』を奏でればよい、と。
こうして私達は力を合わせて無事魔物を討伐した。その後2人はどこか憑き物が取れたかのように、憎まれ口を叩きつつも相手の成果を認め、今後のことを話し合い始めた。その様子を見て、私は胸を撫でおろす。今回の旅を通じてあの二人はより強固な絆を得たことだろう。
一方、サンソン大牙士は、新部隊設立を承諾させる条件としての『終焉の戦歌』の発見には至らなかったことを未だ懸念していた。私は少し考え、現実的な助け舟を出す。
「両軍の上層部はおおよそ却下する理由探しをしている可能性も高い。だからこそ、目的達成そのものに拘る必要はないかと。今回の調査で納得が得られないようであれば、私の今までの戦果を交渉材料に使って頂いても構いません。――カヌ・エ様とのパイプも出来たことですし、ね」
「な、なるほど。いっそ権威で圧をかけてしまえ、と……」
「お前、意外と強かだな……だが、悪くねぇ。実力と真心のある奴の言葉でコトが進むってんなら俺も賛成だ」
「歌というものは、形の無いもの。ですから、先ほどギドゥロ殿が仰ったように、今を生きる我々自身が唄い上げて行くしかないのだと思います。
此度の旅で積み上げたものはいつかきっと、実を結ぶ。だからどうか胸を張って報告なさって下さいね」
私がそう結ぶと、サンソン大牙士は涙ぐみながら敬礼し、ギドゥロ殿は肩を竦めながらも穏やかな笑みを浮かべた。2人は状況を報告すべく、こんどはきちんと連れ立ってグリダニアへ帰って行った。結局始終あの二人に振り回されてばかりだったが、収まるべきところに何よりだ。いい大人なのだからまともなコミュニケーションを取れるようになって頂きたい、とも思うが。
……同時に、こうやって思い起こすと自分の発言に苦笑いが禁じ得ない。
偉そうなことを言いながら、我々『暁』こそ、融和という成果を挙げられていない。次の目的ときたら、敵側の親玉を血染めにするための算段だ。
だからこそ、この日数をかけ、氷の巫女らと対話を重ねた時間に……私自身、必死で意味を見出そうとしているのだから。
戦を終らせる歌。そんな都合のよい奇跡がこの世に存在したら、どれ程良かったことか。
そんなことを夢想しながら、私は彼らの背中を押すべくカヌ・エ様への申出書を封書し、続いて戦歌に関する詳細資料を作成すべくペンを執るのであった。