控えめオスラと花のうさぎ~新生編6

ミルラの回想

――数日後。
 朝の陽ざしを受けて目を覚ますと、熱はすっかり収まっていた。ウイキョーとオルシュファン、それに暁の二人が懸命に看病してくれたおかげだ。
 この日は珍しく晴れていて、外には真っ白な新雪が降り積もり、きらきらと光を反射していた。
 はしゃいで走り回っていたところをタタルに窘められつつ、数日ぶりの湯につかり、垢を落とす。体つきもすっかり変わってしまったけれど、数日すればどうにか慣れそうだ。
 身体を拭き、用意されていたララフェル族用の服に着替えて応接間へ出ると、ウイキョウ達が旅支度を始めていた。ボクは改めて今の状況について説明を受け、明日には大審問を抜け、イシュガルドの市街地へ移動することを告げられた。

 

「それって……あの大きな橋の向こうの綺麗な街へ入れるってこと!?」
 弾む声で尋ねるボクに、ウイキョウは困ったように肩を竦める。遊びじゃないんですから…と彼は苦言を呈するが、「ああ、三国とは違った特色のある、イイ国だ!」とオルシュファンが割って入る。

「建造物や像は見事なもので、機工の技術も自慢だ。シロップの入った甘い茶もある。少し足を延ばした場所に広がる浮島は絶景だぞ!」
「わああ……!早く見たいなぁ!」
 きらきらと目を輝かせるボクにオルシュファンは満足げに頷き、ウイキョーにウインクを飛ばして見せた。
「だからお前たちも存分に我らが国を知り、堪能してほしい。それもまた、新たな旅というものだろう?」
「ええ。そうですね。……私もオルシュファンの故郷を見るのが楽しみです」
 先ほどまで硬さのあったウイキョーの表情がほんの少し和らぐのを見、ボクはこの先の旅に思いを馳せる。

――それが、ボク達にとって、一生忘れることのできない冒険になることを、この時はまだ、知る由も無かった。