控えめオスラと花のうさぎ~新生編3

ミルラの回想

――ボクが作戦完了の報を受け黒衣の森の任務を終えて帰ってきたとき、ウイキョーはまだ戻ってきていなかった。
「まだあきらめちゃダメだ」「爆発の原因は何だ」「エンタープライズは出せないのか」と関係者は皆顔を青くして右往左往している。

周囲には不安なココロの気配がそこかしこに感じられた。
そして、魔導城の有様を見て、ボクは体を震わせる。標準的なヒトの耐久性を考えると、あの爆発で助かるということはまずあり得ない。
……けれど、一瞬ハイデリンの気配を感じてもいたので、もしかしたら助けて貰えたのだろうか。

もし、遠くにいても、ウイキョーの心を感じられたら。無事かどうかすぐに分かるのに。
それにボクにもっと力があれば、一緒に戦うことだってできたはずなのに。
 どうか、どうか、無事で居て。ボクの大事なヒトを、お守りください――。

いつしかボクは無意識に膝まづき、頭をたれ、強く願っていた。そうして気づいたんだ。
――ああ、これこそが『祈り』なんだ、って。

その願いが通じたのか、それとも偶然か。近くの排気口から爆風とともに見覚えのある魔導アーマーが飛び出してきた。

 運転席に乗っている、その姿を目にした瞬間、ボクは全速力で彼の元へと駆け寄る。
「う……う”い”ぎょおお~~!!よかったぁぁぁぁぁ!!!」
「ミルラ……ああ、心配をおかけしてしまいましたね」
 ウイキョーは涙目で飛びついたボクを抱き止め、背後の魔導アーマーに振り返る。
「この子が私とサンクレッド殿を乗せて全力疾走してくれたのです。機械操作が拙い私が生き残れたのは貴方と技術者のお3方のおかげですね」
 そう言いながらその場にいたシド、ビッグス、ウェッジに感謝を告げると、3人は誇らしげにサムズアップする。
ボクが「がんばったね!」と頭を撫でると、魔導アーマーは煙を上げながらもチカチカと複眼ライトを点滅させて反応して見せた。
 ラハブレアの呪縛から助け出されたサンクレッドは、すぐにウルダハのフロンデール薬学院へと搬送されることになった。ウイキョー曰く、疲弊はしているけど、命に別状は無いのだとか。

こうして、色々と後片付けをしたあと、ボクは改めてウイキョーに事の経緯を聞かせて貰った。中々大変な戦いも多くて、思わずしょんぼりしちゃうようなことも沢山あったみたいだ。けれど、それ以上にボクはアシエン・ラハブレアを倒したという事実に胸が高鳴った。

「あのアシエンをやっつけちゃうなんて!やっぱりあのお方の言っていたとおり。ウイキョーは、人間はすごいんだ!!」
 そう言ってはしゃぐボクに、彼はただ、穏やかにほほ笑んでいた。