控えめオスラと花のうさぎ~新生編3

ウイキョウの日記

あれから瞬く間に日は過ぎていった。

今では何処へ出かけても『英雄殿』と歓声があがる毎日だ。
あの時、帝国やラハブレアを破ったのは正真正銘皆が力を合わせた結果に他ならないのだが……。
まあ、折角の祝賀ムードに水を差すのも良くないだろうし、このことは暫く飲み込むべきなのだろう。

思いを忘れまいと日記にしたためたものの、当分はあの壮絶な戦いを、感情と武力の衝突を忘れられそうにない。
……本当は、正義も悪も無いのだろう。それでも、夢のような理想を背負う、仲間がいるのなら。ついてきてくれる部下がいるのなら。どこまでも行ける……否。

――行くしか、無いのだ。

ミルラは気づいているのだろうか。
死の悲しさが分からないと嘆いていた貴方が、私の死を恐れ、安堵し、涙を流したこと。
それ自体がおおよそ喜ばしい変化であるということが。

だからこそ、私は、これ以上『修羅』に触れて欲しくないと願ってしまうということが――。