控えめオスラと花のうさぎ~過去編2(思春期編)

ウイキョウの日記

――照り付ける太陽の光を浴びながら、とぼとぼと歩く。
空腹でキュウキュウ鳴るお腹を抱えながら、僕は今日も東へと足を進める。

 

なぜこんなことに。…ああ、魔物との闘いで疲れて道端で眠っていたら、
次の日の朝、所持金がきれいさっぱり無くなっていたんだった。

 

だから大隼屋を使うことも出来なくて、広大な大陸を徒歩で移動する羽目になったんだ。
沢山持ってきたはずの干し肉も尽きたから、その辺の魔物を狩って、簡単な魔法で火をおこして。
肉のエグみに耐えながらお腹を満たした。
けれどそのうち、弓を引く腕にも力が入らなくなってきて…ああ、最後にご飯食べたのはいつだっけ?

 

それでも、ただひたすら足を進めていたら、いつの間にか地面の感触が変わってきて、
大きな砂浜に出ていることに気づいた。

そして、顔を上げて、僕はわぁ、と声を漏らした。

生まれて初めて見る、海!アジムステップの湖とは比べ物にならない程、広く、果てまで広がる水面。
ざあざあと押し寄せては引いていく水面に、月の光が綺麗に映って、揺らめいて。
とても大きいのに優し気なその光景に引き寄せられるように、僕は海辺に置き去られた小舟に乗り込み、寝っ転がって空を眺めた。

ああ、何だか……おちついて……疲れて、眠く――。